水車館の殺人
- 2010/11/03
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うみねこ以降ミステリーに興味を持ち始めたこともあり今回は日本人作家のミステリー作品を読んでみる事に。本当は十角館というのを読んでみたかったのだけどなかったので今回は同作者の別シリーズを。続きは物語の内容から核心も含みます。それからカテゴリーがラノベ感想だけどそれについては専用の場所がなかっただけということで。
初めて嵌った推理系作品(うみねこ)ではミステリーのいろはも分からずいろいろボコボコにされたので幻想描写と死亡虚偽トリックについてだけは絶対的に気をつけるような習性がついていたことや、アニメ漫画系を数多く見ていると人物の裏の相関関係をなんとなく把握する力などもついてくるもので、その二つの理由からこの話の犯人とその共犯者及び結託した理由についてはかなり早い段階で解けた。アニメ/ゲーム経験も馬鹿にはならない。
昨年の事件で家政婦を殺害した人物、二階の坊主失踪に関与できた人物、絵を隠すことができた人物、あのタイミングで失踪した古川を見たと芝居がかって騒ぐ二人、etc・・・物語の最初の段階からあの犯人達ができているということは想定の一つに入れていたけどそれらのシーンから関係性と共犯を確信した。
しかし犯人をほぼ確定できたのは良かったのだけど細かい伏線や一つ一つの謎については放置してしまったところも多くそれで最終的にはけっこうやられてしまうことに。
まず二階から失踪について死後脱出とは解けなかった。個人的には古川はそもそも最初から二階におらずそれを叙述トリックでごまかして虚構の完全密室を作っていたのかと思っていたけど、それは物語中の見落とし発想とたいして変わらない逃げの解答だったか。よく考えればライトの伏線もあったし、バラバラの理由も繋がっているし。
あとは犯人と犯行の全体像が分かっても最初の家政婦殺害のwhyダニットが分からず、そこを突き詰めないとこの話の肝であるあのドンデン返しの入れ替わりという答えにまでは至れない。犯人が死体とすり替わった理由やその後どこにいたのかということや地下室の変な匂いという伏線などをしっかりと考えるべきだった。
そんな風に各謎が残っているとは分かりつつも放置したまま最後まで読み進めてしまった部分が多かったけどそれでは筋道を立てて説明しきれない。そんな感じで初心者として推理物の奥深さを体感した気分。
ということでこの作品、衝撃のドンデン返しに驚いたり、伏線の散りばめ方とその回収の解説が凄く巧かったので読み終わった時にあぁあのシーンはと凄く納得のいくものになっていたりで楽しめた。特に正木の芸術を続けられない理由と各シーンの色の描写の伏線は印象的。
そんなこんなで今回はある程度は解けたけど一番肝心な仕掛け部分でまんまと騙されてしまっていたので読者としてはまだまだだねと言ったところ。名探偵までの道は遠い(笑)
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