屍鬼
- 2010/12/29
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周りから隔絶され未だ土葬の風習が残っていた集落"外場村"。そこに謎の洋館が移築され桐敷の人間が越してくると突如村人達が原因不明のまま次々と死んでいき・・・
最初は公式あらすじを読んでミステリーなのかと思っていたけど見てみると漫画の藤崎色が根強く流れも謎めいたミステリーというよりは最初から相手方についてはある程度はっきりしていたのでファンタジー色が強かった。
割と期待して入ったけど序盤は登場人物の多さやその人物達が延々と犠牲になっていく流れや風景や時代にミスマッチなキャラデザなどに慣れず、また思っていたミステリー作風とは違うところがあったのでやや拍子抜けして退屈に感じていたこともあった。
しかしこの作品は見るに連れてどんどん惹きこまれるようになっていった。
次々に屍鬼に襲われ滅びが迫っていく村で孤軍奮闘する尾崎と夏野達、しかし楽観的な村人達と閉ざされた環境の中ではそれも無力で毎週のように周囲の人物達が犠牲となっていき登場人物達はひたすら窮地が続く・・・そんな中での危機感や無力感は視聴者としても似たようなものを感じて作品を見ていて緊迫感があった。
そして本当に待ちに待った反撃の瞬間!あの話の尾崎の狡猾さと千鶴に見せたあの表情の瞬間は視聴者としても一緒に爆発するようなカタルシスがあった。そこまで本当に長い間溜め込んだので、ここまで貯める作品はそうはないからなー。
しかし反撃に転じると今度は人間側が暴走気味になり屍鬼側の主張が描写の中心となってまた新たに考えさせられる一面が出てくる。この辺り人間が狂ってるように描かれていたけど、屍鬼側の立場と主張も理解できてもお互い生存をかけた戦いになったのだから屍鬼側が狩られても仕方が無い。屍鬼以外も殺し始めた人間の暴走があったのも事実だけど。
沙子も冷徹に「人間同士を殺し合わせなさい」なんて命令もしていたのでそんな指令を出しておいて自分だけ死にたくないと言ってもそれは都合が良すぎる、でもそれでも「こんな体にならなければ」「死にたくない」という気持ちがあるのは理解できなくもない。
まぁそのあたりに答えなどないのだけど、これは屍鬼側の拡大路線で村人を煽りすぎた結果で必然の反撃だったとも思うので沙子に同情はできない。最終話で大川さんが突きつけたことが正s・・・とは言っても沙子はその当たり前のレールから外れてしまった存在なのでそれに大川さんの常識の理屈は通らない。そもそもあの大川さんの主張も閉鎖的な村の環境を象徴していたのかも。そこに新しい存在を受け入れる寛容性があれば・・・
だからと言ってああいう行動を起こせば人間が反撃を起こすのも当たり前なわけで、いろいろ考えさせられるけど最終的にはお互いに種の生存をかけて戦ったと割り切れる。
ということで沙子達はやられて仕方ないけど巻き込まれて最後を迎えた恵や正雄や徹達は可哀想だったなと。屍鬼側は食事をするにしてもここまでしなくても良かったはずだし、無差別に巻き込んで殺して手下にして、そういう"屍鬼のやり方を気に食わない"と村人達の生存を賭けた戦いとは別に最後にそこに焦点を当てて戦ってくれた夏野の姿もよかった。
正志郎と静信についてはただの狂人にしか見えなかったかな。生き残るためでもなんでもなく自分勝手な理屈で人を殺す。特に坊主の方は・・・ちょっとこの人の言動が理解できないところがあった。
終わり方に関しては人間と屍鬼の決着が完全にはつかずになんとも言い難い余韻が残る形となったけどこの作品としてはこういう終わり方がふさわしいなと納得できるものだった。
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ED「walkの約束」 ED2「月下麗人」
あっちーのー闇はにがいぞー
最初はOPよくないなーとか思ってたけど聞いているうちに癖になる曲で嵌ったw
アバンからの金管音と回る沙子人形がカットインする演出なども良かった。
主な声優
結城夏野:内山昂輝 尾崎敏夫:大川透 室井静信:興津和幸 桐敷沙子:悠木碧
清水恵:戸松遥 武藤徹:岡本信彦 大川富雄:石井康嗣 国広律子:ささきのぞみ
田中かおり:長嶋はるか 田中昭:川上慶子 桐敷千鶴;折笠愛 桐敷正志郎:GACKT
尾崎役の大川さんの演技は渋い魅力があってよかった。特に千鶴を落としにかかる時の優声は女を騙しに掛かっている声だなとそういうところまで伝わってきた気がするw
碧ちゃんは沙子のミステリアスな部分と最後の悲痛な部分の演技が良かった。
千鶴役は折笠愛さんだったけどこの人は耳に残る声だなーと。
個人的なこのアニメの評価 A
なんだかいろいろ書いたけど貯めに貯めた人間の窮地の流れとそれを巻き返す大逆転劇、さらにそこからは屍鬼側視点からも考えさせられることも増えて、とにかく中盤以降のストーリーへの惹きが非常に強い作品で毎週先が気になって仕方なかった。
途中3週~4週休んで数週間先までのネタバレをEDで流してしまったこともあって折角の盛り上がりの流れが阻害されたり、話数が短くなってしまったこともあるのではないかと放送テレビ局の構成的な難はあったけど惹き付ける魅力のある面白い作品だった。