【PCゲーム】 夜明け前より瑠璃色な 感想

体験版の時点で感じていたことだけどこの作品はやはり王道を丁寧に積み重ねるところに特徴があってヒロインの可愛さにエロに物語の面白さを楽しめる正統派な美少女ゲームと言えると思う。そしてこの作風は今から見ると古い時代のものでもあってそれ故に逆に今の時代にはない新鮮さを感じられたりもした。

近年のゲームはネタからネタへの間隔が短く物語の進行も早いイメージで、だからこそ笑いも豊富でテンポ良く楽しめる。しかし恋愛面などで積み重ねるべき描写が足りないと感じることがある。

逆にこのゲームはこれでもかというくらいにそういう掛け合いの描写を積み重ねるのでキャラの相関関係や恋愛関係の発展などに深みがある。しかし当然それが時にはしつこく単調に感じることもあればテンポも悪くなり、スマホゲームにアニメにラノベにＳＮＳと娯楽に溢れる現代では煩わしく捉えられてしまうかもしれない。

実際今回のプレイではその良さも悪さも体感した。基本的には良さの方が目立ってボリューム感もシチュエーションの丁寧さも一時代前だからこその良さがあった。個別最初にプレイした麻衣編はまさにそう。ただやっぱり最近のゲームに慣れているとこの小さなイベントてんこ盛りのボリュームが逆にしんどいと感じる部分があったのも本音。

物語は最後の夜明け前ルートは評判どおり良くできていたけど纏まりはいいとして月に行ってからのクライマックスの流れがややあっさりしすぎていたなという感覚があり、ユースティアでも唯一最終章の盛り上げの演出だけが少し足らなかったと思ったけどオーガストはそこで最後の一詰めがほしいと思うことが多いかも。

あとこの内容なら個別もフィーナをラストに固定して一気に夜明け前まで読ませてくれた方がよかった。最初に強制的にフィーナ√で残り５人を攻略した上での最終√という構成だと肝心のそこに行き着くまでにプレイヤーからのフィーナへの想い入れが薄れてしまう。

全体的には麻衣編が一番楽しめた。単にキャラが好きなのかもしれないけどあの編は兄妹愛の心情の積み重ねから物語性もよくできていたと思う。麻衣編以外だとミア編が好きだったかな。ミアが天使だったしフィーナは月に帰ったけどミアは役目を果たしきった上で残って庶民として達哉と共に慎ましく暮らしていくという終わり方が好き。

姉さん編は家族というテーマは良いけど麻衣と違って姉さんの達哉への気持ちと葛藤が上手く描写できていなくてそのうえ強引な性行為で全て解決してしまったというところが微妙だった。菜月編はイタリアンズの設定が生きてきたところや遠山さんの乱入などはドラマチックで面白かったし概ね良いけど達哉がキレたところが納得できなくてそこが微妙、全体を通してこの主人公の気持ちの浮き沈みの強弱には共感し辛かったかな。

リースは嫌いじゃない…けどえっちシーンは強引な感じもしたのでなくてもよかったかもしれない。あったから駄目ということはないけどあれだと達哉が節操無くも見えるので。

Ｈシーンは今の感覚からすると差分も多くなくテキストもだいぶ短めだけどこの当時はこれでも相当なものだろうしキャラの属性とシチュエーションにはだいぶこだわっていたなと感じて特にフィーナの服装と場所のバリエーションの力の入れようなどは印象的だった。あと麻衣の野外とかフィーナの教室の窓際とか全体的に危ないシチュも多かった気がしてそのあたりの攻めもこのゲームの売りと言えるかも（笑）

まとめとして。全体的に良く纏まっている良作という感想。ときメモなどの美少女ゲームから今の時代の恋愛ADVゲームに移行していく途中のプロトタイプという風にも見えて今とだいぶ昔の両方が混ざり合うような時代の変遷を感じさせる一作だった。

既に次作のFortune Arterialとその次の穢翼のユースティアをプレイしている身からするとこの作品の経験が生きて両作のストーリーや構成に結びついたと感じられる部分も多々ありゲーム会社の辿ってきた歴史という観点からも面白かった。