【PCゲーム】 はつゆきさくら 感想
- 2018/02/02

はつゆきさくら
(SAGA PLANETS 2012)
興味を持ったきっかけは『DRACU-RIOT!』とのあのふざけた合同ムービー(笑) そこから体験版をプレイして面白いと思って購入するも現実でも近い季節にやろうと寝かせておいてその間になぜか先に『花咲ワークスプリング!』をやってしまったという、個人的サガプラとの出会いの作品でありながら二番目のプレイという不思議な縁。

卒業おめでとう─
いやー面白かった!!謎を散りばめて常に先が気になる読み応えのあるシナリオ。シリアスでダークな雰囲気がベースにあるにも関わらず常にギャグも忘れず両立していてコメディー面でも強みがある。またヒロインそれぞれの魅力も掛け合いの中で予想以上に立っていって、ストーリー・ギャグ・キャラ・演出とどこを取っても隙のない良い作品だった。
体験版の範囲の先からではあるけど3日~4日で全クリしてしまいそれはおそらく自身の中では今まででも最短の攻略だったのではないかと。個別やHシーンが短いところはあったのでその影響もあるだろうけど、それだけ集中してプレイさせるだけの面白さがあった。
全てが集約される最終ルートが面白いのは当然として綾ルートでは過去から、シロクマルートでは未来から物語を描き情報の断片を見せ組み立てていくという構成も興味深くてメイン以外の四ヒロインのルートでも退屈させないアクセントがあった。特に二番目までに攻略の決まっている綾編をこういう風に描くのは面白いなと。
ほとんどのルートでビターな切なさの残るENDになっていて寂しさも感じられたけど、そんな中でもそれぞれの主役が心に決着を着けて新しい季節に生きていくというラストには希望も感じられて素直にハッピーエンドとしても捉えられ、そんな切なさとほんのりとした幸せな余韻の両方が混ざり合った物語性がこの作品の良いところでもあった。
最終ルートの一部に触れると、コノハサクヤの行動動機が桜の影響を受けて実はそういうものだったと明かしたところが予想外にして納得もさせる理由で面白かった。それから本物のランと初雪が再会するところをED映像の一枚絵でも描いてくれればなと思っていたらちゃんと力の入ったCGでシーンとして描いてくれてそこが感慨深く大好きだった。
そして最後に桜の「卒業おめでとう」で締めるのは予想通りではあったけどその前の集合写真のシーンの演出がサプライズで素晴らしく、あそこでああいう笑顔の桜が描かれたところが凄くジーンときた。
時折設定の説明に突飛さを感じる部分もあったことはあったけど細かいところは突き詰めすぎないで見ていけば問題なく面白かったし前述したように面白いストーリーの中でもギャグで魅せることも忘れなかったので全体を通してバランス良く楽しめた。
強いて言うなら最終ルートにおけるシロクマの扱いと最終ルートで綾を選択するとBAD的な形でしか終われないというところが若干気になったところで、綾との幸せな結末もできなかったものかなと。まぁ桜END後の世界で結ばれる余地はあるけども。
<攻略順と個別ルートの簡単な感想>
①あずま夜編

処女だもん!初雪と夜の掛け合いの距離感が好きでみんなに変わらず辛辣なことを言う初雪だけどあずまには特に失礼な毒を吐きまくっていてそれにいちいち大きく反応する夜が面白可愛かったw そしてそんな中で初雪に見せる態度こそ本来の夜のものでそれが抑圧されてきたことによる葛藤と初雪との出会いでそこに還るという話も面白かった。
②小坂井綾編

まかのろんさ。浪人編面白かった!序盤にして過去編を見せてくる大胆な構成だけどプロローグがしっかりしているからこの位置にもってきてもしっくりときて前後でいろいろと繋がっていく面白さを感じられた。そして綾のキャラが独特にして予想以上に魅力的でゆきちとの関係性が良かったし声優さんの演技の雰囲気も良く「君~かい」と話すあの口調も癖になった。個別編ではこれが一番好きかな。ヒロインとしても一番気に入った。
③シロクマ編

グルルルシロ!ふざけた掛け合いが多くてなんなんだこのルートと思っていたら受験終了で初雪が消えてEDでまさかそのまま終わりなのかと思ったらその後があった。綾の過去編に対してこれは未来編という感じでこっちの時系列からも情報を出していくのかとそこが面白いと思った。そして成長したシロクマが店長を一途に想い続けるしっかりした娘になっていて中学時代とのギャップもあり良かった。成長シロクマの立ち絵は一番好きかも。それにしてもHシーンでのぐるるるしろぉぉぉぉぉ!という絶頂が強烈な印象(ノ∀`)
④東雲希編

スペシャルミー!シロクマ編でふざけた掛け合いが多かったと書いたけど一番そうだったのはむしろこっちかもしれない。展開的にもそんなに大きな動きはなくて希とのギャグ掛け合いが8割近かった印象があるこの編(笑) 全体的に見ると一番語るところがないけど希がおもしろかわいくておっぱいの破壊力も高かったので良しだぜ!ということで。
⑤玉樹桜編

バニー!桜の得意ネタは幼い頃の初雪が喜んだことがきっかけだった。バニーはそのしつこさとくだらなさと初雪の「死ね」という反応などで完全にネタとして意識がもっていかれていたけどそこでそういう背景があったと明かされるところが良かった。初雪の正体、ランの正体、コノハサクヤの秘めた心、などいろいろな部分で納得させるものを描いてくれた。
<主題歌・BGM>
主題歌にBGM演出も良い作品だった。主題歌は名作感が溢れ歌もいいけど曲調、特にイントロがそれだけで冬と雪と哀愁を感じさせて作品と非常にマッチしているなと。
BGMはシリアスな場面や時にはギャグにも使われていた『Ruined』とダバダ~ダバダバダバダバダ~♪な『freak of nature : start』が特に印象的。あと優しく落ち着く『蘭の香り』と怪しげな『大泥棒の足音』と喫茶店の『ガラスの瞳』なども好き。
<好きなネタ>

印象に残っているのは写真の調査でエロ本を買いに行ってその後喫茶店の綾達の前でそれを広げるのや闇鍋で皆が初雪の身体を触っていて闇が本性をみたいに黄昏るやつなど。あと初雪が久保の名前をいちいち覚えていなかったり親父ギャグで一人くっくしている反復ネタなども。日常シーンなのにネタで一瞬だけシリアスなBGMを使ったり一同という形で複数立ち絵を出してくる演出などもいろいろな場面で目立って面白かった。
去れよゴースト、バニッシュだ・処女だもん・まかのろんさ・グルルルシロ・スペシャルミー・ぴゃー・ぴゃごらぁ・バニー・ウィッキーなど様々な名言(迷言)も残した本作。気がつけばそれらが愛着を持って定着している不思議な魅力に満ちていた。
余談だけどこのライターは恋×シンアイ彼女で炎上したと名を聞いたことがあったけど今回初めて作品に触れてみると好感触だった。電波なヒロインとそれを弄る主人公、それからビター系なENDという手法が主な感じで現在はKeyに居るらしいけどそこは合いそう。
喫茶店のオーナーの正体は明かされなかったけど台詞からするとランということなのかな。人形という共通点もあるし綾にとり憑いていた見覚えがあるという笑顔もランとするなら綾をあの店に引き寄せたのもオーナーが常に店内の状況を把握できていたことも納得がいく。
個別ルートはなかったもののランが凄くいい立ち位置のキャラだった。最初こそは復讐に捕われて初雪に近づいたけどいつしか本当の家族になっていて、オーナーは復讐を支援する立場ではあったけど初雪の生活を支えたいという意図もあったと思うしそもそも学校に行けと勧めるのは目的から見れば真逆の行動で心から初雪を想ってのものだと分かる。
そんなランと初雪の関係性、卒業を迎えた初雪をランが見送るエピローグは感動した。

卒業おめでとう!