【漫画】HUNTER×HUNTER 35巻 感想

エンペラータイムの制約

今巻最もインパクトの大きかった場面はクラピカの絶対時間の「１秒につき１時間」寿命が減るという制約が判明したところ。連載期間で言えばずっと前にこの能力を使い始めてだいぶ長く使うところも見てきたのでそこで後から出されたこの情報は衝撃的だった。

ＧＩ編あたりでゴンとキルアが念のことを深く学んでいくに比例してあの短期の訓練で旅団と渡り合ったクラピカの能力が強すぎだろうという感覚は当時にもあったけどその影にはこんなに大きな誓約があったと。

「命をかける」という発言はチェーンジェイルのことだけを差していたのかと思っていたけどそれはエンペラータイム全てに掛かっていた。今情報を出されてから改めて過去を思い返しても各場面の描写や心情が矛盾しなくてむしろしっくりくるところが凄い。

ヨークシン編で団長を追跡する前にゴンたちに能力を説明する場面でも寿命は縮み続けていたと考えるとそれがあの時のクラピカのゴン達に対する最大限の敬意であったことも改めて伝わってきて後から出てきて情報によって過去編の深みが増した。あの当時からそんな設定を仕込んでいたのかと思うとこの作者の凄さを感じさせられる。


制約はとてつもなく重いものではあるけど一度の戦いで未来の全てを使い切ってアルカなしでは復活できなかったゴンに比べればまだ軽いし一瞬で命が終わるような念能力者同士の戦いを見ているとこれでもむしろ軽い方なのかなという気がしなくもない。

しかしこの巻だけで５年くらい寿命が縮んでしまったクラピカ。本人も能力の全てを把握できているわけではないしもしかしたら誓約以上に寿命は失われているのかもしれない。今まで使ってきた分もあるしクラピカの寿命はどこまで縮んでいるのか。本来の寿命が長くなければこの戦い中にもそれは尽きてしまうかも。

なんとなくそれが今後の展開へ繋がる予感もして、暗黒大陸には寿命を延ばすニトロ米があるので寿命がつきかけたクラピカを救うためにゴン達が集ってそれを探しに行くというストーリーもあるかもしれない。ゴン達はノヴさんの能力で連れてくるとして。



まるで念能力のバーゲンセールだな

ベジータ風に言うならそんな感じの今巻。ゴンやキルアでさえあれだけ苦労して会得したので王子達が簡単に習得していくのは納得しがたい部分もあったけど、壺中卵の儀がウイングのやった荒療治に相当するのだろうしこの一族は代々選ばれた念使いの血統で作り上げた所謂サラブレットなのでその分野に関しては元々相当なエリートなのだろうと。

第四王子の念獣が初期のネフェルピトークラスにやばそうなイメージだけどあれに守護されたらとても突破できそうにないし第一王子とぶつけて潰し合わせるしかなさそう。

今後鍵になりそうなキャラと能力はバビマイナとオイト王妃か。バビマイナは単なる敵対キャラでは終わらないだろうし王妃の念が最後の決め手になるという展開は作者的にありそう。ハンゾーと団長も次の巻でどうストーリーに絡んでいくのか気になった。

念の系統を分析できる人は凄いけどかつて団長の手刀を見逃さなかった人がいてなんとなくあのキャラを思い起こさせるせいで凄みが感じられない。この分析の人が強かったら見逃さなかった人も実はけっこう強かったんだと評価を改めるきっかけになるかも。

HUNTER×HUNTER 35 (ジャンプコミックス) 冨樫 義博 集英社 2018-02-02