【PCゲーム】 クナド国記 感想
- 2022/10/18

クナド国記 (Purple software 2021)

はらはらと舞い落ちる桜 花びらは美しさ讃え
ありきたりな世界観も多い昨今の中では世界にも物語にも独自性があったと思うし構想としては悪くなかったと思う。しかし、主にグランドルートの有無をめぐる構成の面がどうもチグハグで後半の各キャラの扱いがしっくりこず何とも言えぬ尻すぼみ感になってしまった。
物語の核となっていた夏姫のキャラクター性とその考え方はなかなか良くできていて面白いと思う反面、それが最終ルートとして存在しないことは物語を盛り上げる上でも全体の構成としても弊害があった。
夏姫の想い人が主人公とは別にいるというのは別にいいけどならばなぜ共通ルートの範囲で主人公に対してああいう行為をしたのか。そういうのを見るとその段階では普通に攻略&グランドルートとして夏姫√が存在していたのに途中から急なかじ取りをしたのではと感じてしまう。
そしてもし途中で構想が変わってあのような形になったにしてもならばなぜあの行為を取り除かなかったのか、もう修正が間に合わない段階だったのかもしれないけど、そのあたりがちぐはぐに感じた。
グランドルートがなかったことで特に悪かったのは春姫ルートに夏姫のエピソードが侵食してしまったこと。それによって実質春姫のルートはなしでキャラが深まらなかったし、春姫の主人公に対する恋愛感情の深まりも主人公の春姫に対するそれも説得力がなくクライマックスの展開に感情移入し辛かった。
夏姫と冬人の関係性自体はそれはそれでよかったとしてじゃあ春姫の存在はなんだったのか。物語上でフォーカスされる部分と攻略ルートのあり方がうまく噛み合っていない、そんなチグハグさが感じられた。
春姫ルートをちゃんとやった上で夏姫を攻略ヒロインとしてグランドで入れていれば普通に収まったのではと。勿論その場合作品の毛色はいくらか変わってくるけど。
双子ルートの死鬼襲来の上から来るぞなシーンはHUNTER×HUNTERのネテロvsネフェルピトー風な緊迫感がありこのゲーム屈指の名局面。街全体を巻き込んだ存続を賭けた死闘という要素も燃えたし一番盛り上がりを感じた場面で、ああいった盛り上がりを中心に描いていければもっと良くなったかもしれない。
シーンを彩る和風戦闘BGM演出も良くそこはお気に入り。まとめとして、構想には意欲を感じたけど製作の気力と体力が最後まで持たなかったのかなというような印象の作品だった。メーカーも業界ももう少し若い時にこれを作れていれば一味違った名作になったのかもしれない。